遊び

今日もまたやるぞ!うれしいなあ、もう、という気分でお弁当を作る。
おかずはきのうマージャンの帰りにスーパーで買ってきた
鳥肉の空揚げと手製の大根、人参、こんぶの入った漬物、
それとイチゴが大二個、そして海苔の二段重ねのミニ海苔弁。
ご近所には内緒で朝八時半に家を出発。
血糖値を下げるために仕方なく駅まで三十分歩く。
それはこれから遊びに行く自分へのささやかな毎日の宿題である。
電車の中では、新聞からの切り抜き記事「生きる者の記録」を読む。
私の棺桶での最後のお別れは、ありふれた合掌ではなく
健さんのような献杯でもなく、家族の明るい拍手がいいなあ。
今日も私には気づかなかったことを、この記事から教えてもらった。
拍手とは良いアイディアだ。遺言のはしに付け加えておこう。
もう稲毛駅に着いた。乗り越すところだった。
電車から下りて一分で「マージャン大学」に着く。
急な階段なので三階までは疲れる。
何時かこの階段も上れなくなる日がくるのだと肝に銘ずる。

健康マージャンは「吸わない、飲まない、賭けない」がモットーの
老人仲間で四時半終了の一日二千円。
早くから行くのは男性と決まっている。
私にはくだらないプライドがあるから、始まる前には行けない。
「おはようございます。」
といつも元気な伊東さんの答え。
「今日は早いですね。」
と私。
「今日は放射線の治療がお休みなの。」
乳癌を手術した伊東さんの答え。
「今日はおけいこごとがない日なのよ。」
御友さんは有料老人ホームからくる。
「さあ、はじめましょ。」
もと銀行員だった山村さんがみんなをせかす。
「チィ」「ポン」と続き、
「ロン!中・ほんいつ、ドラ、ドラ、ドラ、バンバン、ハネマンです。」
今日はついてる。
どう考えても山村さんが勝って当然なのに・・・ 私が二度も勝った。
あっという間に午前中が過ぎる。
マージャンに勝つと非常に嬉しい。殊に男性に勝つと。当たり前か。
私は試行錯誤しながら勝ちに進むまでのプロセスを考えるのが好き。
こんなに自分に適した「遊び」は他にはない。
まさか老後に、このような自分に合った楽しみがあったとは!
楽しく教師をして、その上たまってしまった財産の一部を
マージャンに使うなんて!思いもよらなかった。
願わくは主人を癌で亡くした虚脱感を埋めてくれる
生きがいにも通じるマージャンのイメージを、
どなたか囲碁や将棋のような世間一般に通用するものにしてくれないかしら。
対戦成績が全国一位になったことも三回あるんだじょんー。